給排水設備
電気関係と比べると、給排水設備は劇的な変化は少ない分野かと思います。それでも各メーカーは売り上げのためもあるのでしょうが、絶えず新機能の開発を行っています。特に、ユニットバスやキッチン、便器などはあらゆる機能が盛り込まれ、次々に新製品が発表されています。しかし、それぞれに基本的な機能はすでに十分洗練されており、特別な理由がない限り個別の機能についてはあまり固執する必要がないのではないかと考えています。例えば、便器から音楽が流れる機能というのは極端な例としても、ショールームにいけばあらゆる機能が満載で慣れている我々ですら混乱することがあります。なので、基本的には「あったら便利かも」という考え方ではなく「絶対に必要かどうか」という基準で判断する事をオススメしています。アメリカやヨーロッパに海外旅行に行くとホテルでも住宅でも、基本的にはスタンダードな機能の器具ばかりですし、それで事足りているのだと思います。しかしながら、日本てはそもそも大きなメーカーの商品や広告を目にする機会が多く、その他の選択肢を知る機会が少ないのも事実です。なので、むしろ我々としてはユニット型の洗面化粧台でなく陶器の洗面ボウルや、ユニットバスではなくタイル貼りなどで手作りする浴室など、質感が優れていたり、長く使う事で愛着が湧く品物をご紹介する事も多くあります。
空調設備
空調の中でも冷房に関しては大半はエアコンを使用していると思います。実際のところ冷房に関しては他の方法を採用することはほとんどありません。一方で暖房に関しては、エアコンやガス/灯油/電気のストーブなどに加え、床暖房、オイルヒーターやパネルヒーター、薪ストーブやペレットストーブなど代表的なものだけでも多くの種類があります。ただ、それぞれに長所短所があり一概におすすめの方式があるというわけではなく、生活スタイルや在宅時間、建物本体の仕様などにより最適な方式は変わってきます。また給湯を含めた熱源についても同時に考えなくてはならない場合が多くあります。例えば、温水式の床暖房を使用する場合の熱源は電気/ガス/灯油いずれも可能ですが、現時点では都市ガスがランニングコストと供給の手間を考えると最もバランスがとれていると考えています。しかし、プロパンガスの地域では一般的にランニングコストが高くなってしまいがちなので、ここではガスの熱源はお勧めできません。また、エコキュートを使用したオール電化にするのであればガスの熱源は使用できません。オール電化にするということは当然ガスコンロも使用できないため、IHクッキングヒーターが必須となり、暖房だけでなく調理も含めての検討が必要になってきます。このようにいずれの方式を採用するにせよ、極端に寒冷な地域を除けば設備システムが先立つのではなく、生活スタイルを中心に検討し自然な通風等を最大限に生かしながら最適な空調方式を採用する事が大切だと考えています。
断熱/気密
現在、一般的に建てられている建物についていうと、一世代前(30年前頃)と比べると格段に断熱、気密性能が格段に上がっています。壁・床や天井の断熱材やアルミサッシなど、工業製品の性能は良くなり続け、施工業者側もこれらの性能への意識が高くなっているため、弱電関係と並んで、近年、最も変化があった分野かも知れません。そして、最も大きな変化の要因としては、住宅に限らず一般的に省エネルギーについての意識が強くなってきたということかもしれません。またそれを行政側も様々な施策で後押しをして、断熱/気密のスペックに関してはずっと上がり続けているというのが率直な印象です。もちろん、断熱に関しては性能が上がる事に異論は無いのですが、一般的には年間を通して窓を開けて自然な通風を行いますし「建具を閉じた時に空調がムダ無く効く」程度の断熱性能があれば、十分快適な生活環境と考えています。同様に気密性能についても結局の所どれだけ高性能にしたところで、通風を行うかぎり一定以上はオーバースペックになってしまいがちです。それならば、いっそのこと全館空調にすれば良いという考え方ももちろんあります。これは結局の所、生活スタイルや考え方次第ではあるのですが、高気密/高断熱とセットになる全館空調は、もともと北欧のような「年中涼しい〜酷寒」の地域からはじまった考え方で、関東以南のように冬は寒くとも夏は亜熱帯のような高温多湿になる環境では、冬:暖房+加湿、夏:冷房+除湿という正反対の空調が必要になる上、春秋の中間期には窓を開けて外気を入れるのが最も省エネルギーな対応である事を考えると、特別な事情がない限り全館空調を取り入れる利点はあまり無いのではないかなと考えています。ですので、通常は出来るかぎり自然な通風で快適な室内環境を得られるような計画と、冷暖房効率が悪くならない程度の断熱/気密性能というのを基本的な考え方としています。