CONCEPT

住宅について

住宅の設計は最も身近でありながら難しく、出来上がったものは必ず個性的なものになります。その理由として、身近であるが故の「こだわり」と家庭ごとの「あたりまえ」という認識の差があると思っています。前者はそのままですが、基本的には建主自身がすまい手である以上、細部までこだわりが出るのは当然で、よほど特殊なこだわりでない限り打合せの中で整理し取り入れながら設計していきます。しかし、後者はなかなかの曲者で、すまい手の原体験といえるこれまでの住まい方は家庭毎に違っており、「あたりまえ」と思うラインがあまりにも色々あるのが悩みどころです。日本に限っていうと、明治期の近代化、戦後のすまい方の変化「食寝分離」、産業構造の変化による「職住分離」、高度経済成長期の「持家政策と核家族化」といったように、住宅をとりまく状況は大きく変化しました。これらの変化自体の善し悪しの判断は別にして、地域と世代間での「あたりまえ」の共有が減っていった結果、すまい方は本当に個人個人に依っているのを実感しています。なので、住宅の設計ではすまい手それぞれの多様な生活を設計に取り入れる一方で、必要があれば助言もしつつ新しい住まいと同時にすまい方も一緒に考えていきます。設計者のエゴそのままの単なる見た目の良い箱ではなく、かといって単に建主のいわれるがままに作るのでもなく、時には議論をしながらの楽しい共同作業をしながら、本当に納得できるものを作り上げていくのを目標にしています。

それでは、住宅の各要素についての考え方については以降の頁をご覧下さい。