用途 | ギャラリー・飲食店舗 |
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所在地 | 高尾山麓(東京都八王子市) |
工事種別 | リノベーション |
業務範囲 | 企画・設計監理・運営 |
床面積 | 169.33㎡/51.22坪 |
施工 | RG DESIGN |
ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン三つ星を獲得している東京・高尾山は、年間300万人の登山観光客が訪れるとも言われる世界的観光地です。新宿から登山口まで1時間以内という圧倒的なアクセス性、ケーブルカーやリフトが併設され子供からお年寄りまで楽しめる行楽性、そして、美しい富士山を望むことができる山頂からの景色や豊かに生息する動植物だけでなく、開山1300年の歴史文化も感じられ、東京で唯一の「日本遺産」にも認定されているこの場所は、奥行の深いアウトドア・ロケーションでもあります。
計画地は、その高尾山麓において最も人が行き交う歩行者専用道路「もみじ通り」の角地にありました。高尾山が日本のアウトドアにおけるエントランスと言えることは明白なことから、この場所はアウトドア・マーケティングにおいては「タイムズスクエア」とも位置付けることができると考えました。また一方で、ファッショナブルに日々進化している近年のアウトドアカルチャーとは対照的に、昔ながらの商店が立ち並ぶ麓のロケーションは、アウトドアブランドの参入機会がとても限られているという課題にも注目しました。
これらを踏まえて、麓の新たなアウトドアプレイスとして登山観光客が楽しめることはもちろんのこと、施設運営ビジネスとしても高い収益性を備えた上で、この立地を最も有効活用できるコンテンツとは何かという検証の中で、近年成長している「海の家」をベンチマークに、「山の家」として様々なブランドが情報発信できるプロモーションスペースへのコンバージョンを提案しました。
その上で、長らく空き家だったこの建物のリニューアルに求められることは「ブランドのプロモーションのしやすさ」「建物へのアクセシビリティ」「場における高い快適性と滞在性」と考えられました。
まず、もみじ通りを進み登山口へ向かう人々、そして下山後に戻ってくる人々にとって、プロモーション能力を最大化し、かつ建物への入りやすさを確保するため、もみじ通りに面して開放的なデッキスペースを広く計画することで、通りと建物の間のアプローチ空間にパブリックな性質をもたせることにしました。そして、角地であることを活かして建物の二面を大きくガラスのカーテンウォールに変換することで、プロモーションスペースへの透過性を確保し、その一体的なファサードのフレームを強調することで麓のランドマークとなることを意識しました。また、デッキスペースでの滞在性を高めることはブランドのプロモーションに大きく影響するため、東京山側ならではのコーヒーやクラフトビールを楽しめるテイクアウト店を計画し、小川のせせらぎを聴きながら、ゆっくり揺らぐモミジ越しの山麓の風景をじっくり楽しめるデッキベンチを用意することで、単なる通過動線にならないように配慮しています。
オープニングとしては、フランスから日本に広く浸透しつつある SALOMON[https://salomon.jp] がプロモーションスペースを活用しブランドコミュニケーションに役立てていますが、今後は数年単位で様々なブランドへ入れ替わることで、高尾山に訪れる人々にとっての「体験の多様化」に繋がりつつ、東京の山側に新しい価値をつくってくれることに期待しています。